ダイオキシン 対策の根幹はごみの削減
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2300グラム。1年間に、これだけの量のダイオキシンが全国のごみ焼却施設から排出されていると、厚生省は推計した。全体量 はこれまでつかんでいなかった。 5日まとまった施設調査の結果に基づいて、はじき出した数字だ。産業廃棄物の焼却場から960グラム、一般 廃棄物の処理施設からは1340グラムである。 厚生省は、「規制強化で削減対策が進んでいる」と強調する。しかし先月、政府が決定した基本指針で掲げた目標は、2002年で約800グラムである。これまで通 りの規制強化に重点を置いた対策で、目標を達成できるのだろうか。疑問が多い。 厚生省は昨年12月、排出ガス中のダイオキシン濃度の暫定基準を設け、3年後にさらに厳しくする。 まず気になるのは、設備の改善が遅れている産廃焼却施設の状況である。全国で6000カ所ちかくあったが、昨年12月までの1年間に約3分の1が休・廃止している。多くは工場などの自己処理用のもので、基準をクリアできず、ごみは処理業者の施設に回されたようだ。規制強化は削減に効果 があった。 しかし、同時に大量の「欠陥施設」が長い間、処理を続けていたことにもなる。さらに稼働している施設のうち2割以上が、義務付けられた濃度測定をしておらず、一部ではあるが基準を超える数値が検出されている。主に家庭からの一般 廃棄物を焼却している市町村の施設にも、基準オーバーがあった。ともに、いくつもの問題点を抱えていることを浮き彫りにした調査結果 でもある。 厚生省が「削減対策が進んでいる」と判断する理由は、何だろうか。 一般廃棄物の焼却場については、1997年に1度調査し、年間排出量を4320グラムと推測していた。この間の減少が理由だ。確かに前進はあった。しかし、問題は、これからさらに削減できるかである。 政府が打ち出した「2002年約800グラム」は、厚生省などのデータに基づくものであろう。ただし条件がある。「ごみの焼却量 が増えない」ことだ。 つまり、廃棄物総量の抑制とリサイクルが前提となる。 ところが、横ばいだった排出量は、厚生省の最近の調査によると増大傾向を見せ始めている。これに歯止めをかけ、総量 を減らさなければ、目標達成はおぼつかない。 廃棄物の流れを川に例えれば、「上流」を厚生省が、処理基準などの「下流」を環境庁が担当する。 環境庁の中央環境審議会廃棄物部会が、今後の指針となりうる報告書をまとめた。廃棄物をリサイクル資源と位 置付けたドイツの循環経済法をモデルに、廃棄物処理法の大幅な改正の必要性を指摘している。 部会はごみの抑制やリサイクルが進まず、不法処理が続発している背景として、ごみの9割を占める産廃の排出者責任があいまいなことをあげ、責任の明確化を求めている。「ボール」は厚生省に投げられた格好だ。厚生省は、このボールを重く受け止め、改正に踏み出してほしい。 警察庁は5日、環境犯罪対策計画をまとめ、産廃不法投棄の取り締まり強化を全国の警察に指示した。しかし、現行の処理法では企業などが業者に処理を委託した後は、どのように処分されても責任を問うことは難しい。改正を急がねばならない。 [毎日新聞1999年4月7日] |