ダイオキシンの耐容1日摂取量、体重1キロ当たり4ピコグラム

−−環境庁など報告書

 ◇環境庁・厚生省が報告書−−WHO基準の上限採用  人間が生涯にわたって摂取しても問題のないダイオキシン類の耐容1日摂取量 (TDI)の見直しを進めていた環境庁と厚生省の合同専門家会議は21日、当面 のTDIを、体重1キロ当たり4ピコグラム(ピコは1兆分の1)とする報告書をまとめた。世界保健機関(WHO)は昨年5月、同4ピコグラムを最大値、同1ピコグラム未満を目標値とするTDIを提案したが、合同専門家会議は目標値を採用しなかった。環境庁は新しいTDIをもとにダイオキシンに関する大気や水質の環境基準作りを始める方針だ。  TDIはこれまで厚生省が10ピコグラム、環境庁が5ピコグラムと数値が分かれていた。WHOの提言を受け、2月から合同専門家会議が見直しを進めていた。  同会議はWHOがTDIを1〜4ピコグラムに設定する根拠になった実験や国立環境研究所のデータを独自に検討した。その結果 、妊娠中にダイオキシンを投与されたラットが産んだ子供の生殖器や免疫機能に異常が生じるかどうかを調べた米環境保護局(EPA)の実験データを採用し、4ピコグラムを導いた。ポリ塩化ビフェニール(PCB)の中で毒性の強いコプラナーPCBもダイオキシン類として扱うことにした。  検討したデータには、EPAの実験より少ない投与量でも、胎児のときに母親を通 じてダイオキシンを投与されたラットが産んだオスの子供の精子数が減少したり、アカゲザルの子宮内膜症が増加するという報告があった。  これらのデータは、WHOが1ピコグラム未満という目標値を設定する根拠にもなったが、投与量 と症状発生にはっきりした比例関係がないことなどから「信頼性が低い」と判断した。「二つの値があると行政的に混乱を招く」との意見もあり、目標値を設定しなかった。  報告書によると、平均的な日本人の1日当たりのダイオキシン摂取量は、体重1キロ当たり2・6ピコグラムで、新しいTDIを下回る。一方、母乳を通 して乳児が1日に取り込むダイオキシンは体重1キロ当たり約100ピコグラムで、TDIの20倍を超えるが、「(免疫機能が高まるなど)母乳が乳幼児に与える有益な影響から判断し、今後とも母乳栄養は推進されるべきだ」とした。  環境庁は新しいTDIの決定から6カ月以内に大気中濃度の指針値を見直して環境基準に格上げする。新たに水質や土壌の環境基準も設定する方針だ。【鴨志田公男】

[毎日新聞6月21日]