年間2900グラムを排出 ダイオキシン・初の実態調査

98年、欧州の数十倍

◇なお欧州の数十倍

 ごみ焼却などにより環境中に排出されたダイオキシン総量は1998年に約2900グラムだったとする報告書を環境庁のダイオキシン排出抑制対策検討会(座長=平岡正勝・京都大名誉教授)がまとめ、25日開かれたダイオキシン対策関係閣僚会議に提出した。97年の推計排出量 約6300グラムに比べて半減し、97年12月に始めた規制の効果が表れた形となっているが、日本の排出量 は欧州各国の数倍から数十倍に上っている。環境庁は2002年に1997年比で9割削減するという政府目標の達成に向け、小型焼却炉や産業系からの排出を新たに規制する方針だ。

 集計はこれまでに実施された排出実態調査や学術研究などをもとに、排出量 の推計が可能な発生源を対象に行った。一般廃棄物焼却施設と産業廃棄物焼却施設については、廃棄物処理法の改正に伴い年1回の排ガス濃度測定が義務付けられたため、98年分はこれらのデータを初めて使って排出量 を推計した。

 また、事業所に設置されている未規制の小型焼却炉(1時間当たりの処理能力が200キロ未満)についても、約100施設の実測データをもとに排出量 を初めて試算した。

 この結果、98年のダイオキシン排出量は、一般廃棄物焼却施設1340グラム▽産業廃棄物焼却施設960グラム▽未規制小型焼却炉325〜345グラム▽産業系272グラム――などとなり、総量 は2900〜2940グラムと推計された。

 未規制の小型焼却炉からの排出が全体の1割を超えている。産業系では規制対象外の鉄鋼業焼結工程、亜鉛回収業、アルミニウム合金製造業の3業種の排出量 が産業系全体の約5割を占めた。また、97年の排出量についても、今回さかのぼって推計した。一般 廃棄物焼却施設4320グラム▽産業廃棄物焼却施設1300グラム▽産業系382グラム――など総排出量 は6330〜6370グラムとなっている。

 ダイオキシン排出量の詳細な調査は今回が初めて。環境庁はこれまで研究論文などをもとに年間約5300グラムと推計していた。  国連環境計画が5月にまとめた報告書によると、欧州各国の95年前後の年間排出量 はスウェーデン22グラム、デンマーク39グラム、ドイツ334グラム、オランダ486グラムなど数十グラムから数百グラムの範囲内で、日本に比べて削減対策が進んでいる。

 この日の関係閣僚会議では、人間が生涯にわたって摂取しても問題のないダイオキシンの耐容1日摂取量 (TDI)を体重1キログラム当たり4ピコグラム(ピコは1兆分の1)とする環境庁と厚生省の合同専門家会議の提案を正式に承認した。【鴨志田公男】

 ◇根拠ある数字で計算  検討会メンバーの脇本忠明・愛媛大教授(環境計測学)の話 従来の推定に比べ、根拠ある数字をもとに計算しており、初めての本格的な発生源別 の集計といえる。日本の排出量は依然として世界の中ではケタ違いに大きく、今後の対策が重要だ。ダイオキシンは生活全般 から発生している。日本中の人々が、そのことを認識して行動すべきだ。    

◇発生源別のダイオキシン排出量◇   発生源     排出先   発生量 (グラム)                

                 97年          98年

一般廃棄物焼却施設 大気    4320         1340

          水    0.016        0.016

産業廃棄物焼却施設 大気    1300          960          

          水    0.065        0.065

未規制小型焼却炉  大気  325〜345      325〜345

(事業所設置分) 火葬場       

         大気  1.8〜3.8      1.8〜3.8

産業系発生源  

製鋼用電気炉   大気     187        114.7

鉄鋼業焼結工程  大気   118.8        100.2

亜鉛回収業    大気      34         16.4  

アルミニウム   大気    15.7         14.3  

 合金製造業  その他の業種   大気・水   約26   

約26 たばこの煙 大気   0.075〜13.2  0.079〜13.9

自動車排出ガス   大気     2.14         2.14

廃棄物最終処分場  水     0.078        0.078           

    総計   6330〜6370   2900〜2940

   [毎日新聞6月25日]